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”多聞言葉”シリーズ(探喫8‐33)

守破離

 『墨字絵隊観閲式(第5期)』が決定した。

 一期一年なので、この企画がはじまって5年目に入ったことになる。今回も、12名(定員)の参加者があり、実に有難いと思う。継続は力というが、多少ながら、ブランド力が培われてきているような気がしている。

 人が道を究める、上達の極意として“守破離”という3つのステップがあるといわれている。ネットで調べてみると、「守り尽して、破るとも、離るるとも、本ぞ忘るな」という千利休の言葉が語源だという。また、室町時代の世阿弥の「風姿花伝」に出てくる能を究める極意「序破急」によるという説もあるそうだ。

 “守”とは、基本を忠実に身につける段階をいう。素晴らしい師匠に出逢い、その流儀を完全にマスターできれば最高である。その時、大切なことは謙虚と素直さ。分かったふりをせず、すぐ師匠に素直に聞いてみることである。有名な同業者が、「うちの事務所は“ハイ”と“イエス”しかない」と話していたが、この段階での学ぶ姿勢をいっているのだと思う。白紙の状態で居れるか・・・。

 次に“破”とは、仕事に創意工夫を重ね、自分流をつくりあげていく段階である。ここで大切なことは、傲慢や慢心に陥らないことである。墨字絵士として駈け出しの頃である。生徒さん達にとって良かれと思い、自説を滔々と述べていると、「それって、あんたの師匠に相談した結果なの?」と問われ、そうじゃないと答えたら、「良く、師匠に相談してくれ」と一言・・・。人は、内容ではなく、誰がいったのかで、安心しているのである。虎の威を借りる重要性を知り、「うちの師匠が・・・」と前置きしていうと聞き入ってくれたのである。そのうち、「あなた自身はどう思う?」と聞かれるようになったことを覚えている。自分流が認められて、はじめて“破”である。

 そして“離”とは、師匠から離れ、自分流を世に問うときであろう。後継者でいうと、引き継いだ会社の抜本革新を断行し、第二創業を始めるときである。先代から継承した事業を、次元を変えて成長させていくことが問われる。この時に大切なことは、「不易流行」の見極めである。そして、時流を捉えて、自らの強みをどう生かしていくかであろう。

 “守破離”は、上達の極意だという。3つのステップ(守〜破〜離)を踏みながら、道を究めていくのであるが、私流にいうと逆算したらどうだろう。つまり、“離”の構想を先にイメージしておく。

 来るべき時のあるべき姿(離)を描き、現状との差を捉える。その差を埋めるために何をなすべきか(守と破)を考える。未来からの逆算である。

(H28.9.21)