多聞会(より多く聞く会)

”多聞言葉”シリーズ(キハ‐53G)

臨床会計学

 “臨床会計学”とは、聞き慣れない言葉である。

 テーマは『会計人はどう経営に貢献するのか? “臨床会計学”の構想』であった。

 周六氏が“臨床会計学”の構想へ取り組んだ動機は、「先生の研究は世の中に役に立っているのですか?」、その一言からであったという。 「そんなこと考えるのは研究者の仕事ではない」とか「価値は送り手ではなく受け手が決める」などいう考えも、学者の間ではあるそうだが・・・。産学官連携がいわれるようになって、久しい。立場の違いを超えて、関係性が生まれるのは有難いと思う。現に、関係性の良さは必ず生産的な状況をつくりだすことを経験において知っている。

 “臨床”とは、現場を重視する考え方をいう。

 その意味においていうと、「会計学はもっとも実践知を重視し、帰納的に理論化したものだ」と思うので、そういう視点で体系化されると、知の共有化が一層進み、経営者にとって大いに有難い話ではないかと考える。

 “臨床会計学”の構想とは、「実践知(経営者)〜“臨床知”(職業会計人)〜科学知(学者)」の循環体系を構築することによって知と行の統合化を図り、会計学が本来持つ実践的な価値(社会貢献)を一層高めていこうという意図がある。

 従来、会計学と言えば、経営者にとっては、制度会計(利害関係者への報告目的)のイメージが強く、「義務だから、しょうがない」という受け止め方をしている人たちが多いようだ。しかし、会計学には昔からもう一つの領域がある。それは、管理会計と呼ばれるもので、経営者の意思決定をサポートするための会計の領域である。すでに、お馴染みのABC分析やBSCなどは、その領域の研究から生まれた手法である。

 「会計がわからんで正しい経営ができるのか!」(京セラ・稲盛会長)の言葉は、会計の外にMAS(経営助言)の手法を求めて迷走していた多くの会計専門家の目を覚まさせてくれたと思う。

 周六先生は、“臨床会計学”の構想の中で、「経営者の実践知と学者の科学知を結びつける存在として、会計専門家の役割は重要で、そして、フィールドリサーチャーであるべきだ」と述べているが、小生もそう実感している。多聞会では、それらを未来会計の領域の仕事として位置づけているが、問題発見力(当事者意識)、課題の絞込みと提案力(目的思考)、課題解決へのコラボレーション力などが問われる。

 そして何よりも、関係性思考による統合力が問われる・・・・・。

(H25.9.23)