123.90

d_07826184.jpg

d_07826184.jpg

DSC_1667“多聞言葉”シリーズ(探喫09‐07)

カニの分

列車の中で、『渋沢栄一 100の金言』(渋澤健 著)を読む。著者の渋澤健氏(1961~)は、渋沢栄一(1840~1931)の5代目の子孫らしい。

渋沢栄一が逝去して、88年経つが、いまだ「論語と算盤」への関心はますます高まっており、全国からの講演依頼が絶えないという。

著書の中に、「正しい生き方」という章があり、その中の「カニのような心構えが大事」という項目があり、カニの心構えと正しい生き方にどんな関係があるのだろうかと不思議に思い、読むと次のようなことが書いてあった。

「蟹は甲羅に似せて穴を掘るという主義で、渋沢の分を守るということに心がけておる」(「論語と算盤」・処世と信条)

つまり、「カニが甲羅で身を守り、穴を掘って身を伏せているように、事情に合わせて分をわきまえるという姿勢を心がけるべきだ」という。

傲慢あるいは慢心(仏教でいう煩悩の一つ)という言葉があるが、人間はちょっと物事がうまくいくと、図に乗ってしまい、取り返しがつかない事態を招いてしまうことが多々ある。

カニの行動を例にとって、私たち凡人が陥りやすい傲慢・慢心の罠を示唆してくれたのであろう。「何事も図に乗るな」と、調子に乗っていると、おだて上げられ、身の程を弁えずに、リスクを背負わされてしまうことだってある。そして、痛い目にあっている人がけっこう世の中にはいる。

分をわきまえる姿勢ができていると、不用意に物事を引き受けるような愚行はしない。断るべきときは断るという賢さや勇気が身につく。確かに、堅実な経営を心がけて着実に業績を伸ばしているトップ経営者には、分をわきまえている人が多い。断る時はきちんと断る。YesとNoを明確にいえる人・・・。

さらに納得したのは、“カニの分”は「成長する分をわきまえる?」ということだ・・・。

カニとは脱皮する生き物である。自分の成長に伴い、古い殻を捨てて、新しい殻で分を守るのだという。つまり、「分とは一定しているのではなく、常に成長している」のだという。

しかし、カニと人間では違う。人間に場合は、自らの意思で脱皮を図らない限り、器の成長はあり得ない、つまり分は成長できないままである。一年前の自分と今の自分では、何がどう変わり、成長できたのか?分の成長をちゃんと見極めることができているだろうか?

成長のために目標設定を明確にして、成長する“カニの分”をわきまえたいと思う。

tamon言葉”シリーズ(探喫 09‐08)教養

(H31.2.18)DSC_1569